初輯
第一回
結城落城。里見季基戦死。里見義実、杉倉氏元・堀内貞行と落ちのびる。義実、三浦で子供に泥をぶつけられ奇瑞と喜ぶ。天かける龍を目撃、龍の考証を語る。貞行、船を調達、一行安房へ。
第二回
安房四郡の状況（神余光弘の暗愚、佞臣山下定包の暴政、義民杣木朴平・洲崎無垢三、定包暗殺をはかるが罠にかかり光弘とその忠臣・那古七郎を誤殺。定包、滝田城主になり光弘の愛妾玉梓を正妻に）。安西景連・麻呂信時が滝田（玉下）攻め検討中に義実来訪。
第三回
義実、安西・麻呂と対面。安西、義実を客将に迎える条件として鯉を釣ってくるよう要求。義実釣りにはげむ。
第四回
義実一行、金碗八郎と出会う。八郎、義実に定包討伐を依頼。義実、蟹から作った薬で八郎の瘡を治療。八郎、誕生寺近くの竹林に放火して里人を集め、定包討伐の兵力とする。義実・八郎、東条城を奪う。八郎、敵将萎毛酷六を倒す。義実軍滝田城へ。
第五回
里見軍滝田城を囲む。敵将錆塚畿内死亡、岩熊鈍平重傷。定包、安西・麻呂に救援を乞う使者（妻立戸五郎）を差し向け篭城。義実、降伏勧告の檄文を鳩を使って城中にばらまく。鈍平・戸五郎、定包に謀反、その首を取る。
第六回
鈍平・戸五郎、定包の首もって降伏するが八郎は彼らを断罪。八郎、義実の反対を説き伏せ玉梓を処刑。玉梓、義実・八郎に子々孫々に続く呪いをかける。東条の氏元の使者蜑崎輝武、信時の首もってかけつける。
第七回
輝武の事情説明（氏元が安西の内通を受けて麻呂を討った）、安西、平館を奪う。安西の老党・蕪戸訥平、滝田を訪問。義実と安西友好を結ぶ。義実、八郎に東条城を与えようとするが、八郎は先君に操を立てて自害。八郎の隠し子加多三（金碗大輔）末期の父と対面。義実、女の幽霊を目撃。
第八回
義実、五十子を娶り、翌年伏姫、翌々年義成誕生。伏姫三歳、障害治癒を祈願のため乳母につれられ洲崎明神へ、役行者から数珠と予言授けられ健康体に。長狭郡で子犬が狸に育まれる奇談、義実が子犬を引き取り八房と名づける。安西領飢饉、義実救援米送る。翌年里見領飢饉、金碗大輔が米を借りる使者として館山訪問。安西、大輔を欺き東条・滝田へ進軍。大輔は館山を脱出、訥平率いる兵と戦闘。
第九回
安西、滝田城襲撃。義実、八房に安西の首取れば伏姫を妻にしてやると戯言。八房、安西の首級を挙げ里見軍逆転勝利。東条攻めの大将訥平、安西の死を知って逃亡、部下は降伏。安房・朝夷の民、平館・館山の城を落とし、訥平らの首級を義実に届ける。義実安房全郡を手中に、治部少輔になる。伏姫、かりそめの約束を果たすべく八房の妻となる決意。義実、『捜神記』中の「馬の恋」の話をする。
第十回
伏姫の数珠の文字「如是畜生」に変わる。伏姫、八房にともなわれ富山入山。後を追った輝武、川に流され死亡。大輔の館山脱出後の苦労話と現状、伏姫入山を知った大輔、姫を取り戻すべく富山へ。
第二輯
第十一回
五十子、伏姫を思うあまり病に。義実、役行者の夢を見る。貞行、偽手紙に呼び出され滝田へ。義実と貞行、ともに富山へ。
第十二回
伏姫入山後の生活描写（日々の読経を通して八房菩提心に目覚める）、伏姫、月経が止まって腹が膨れ、仙童から懐妊を宣告される。
第十三回
懐妊を恥じた伏姫は八房とともに入水する決意。大輔誤って八房もろとも伏姫を射殺、自害しようとするが義実に止められる。大輔これまでの事情を説明。伏姫、数珠の力で息を吹き返すが身の潔白を示すため切腹、傷口から出た白気と八つの数珠玉が八方へ散る。
第十四回
大輔出家、丶大法師を名乗る。五十子の危篤と死を知らせる使者あいついで到着。伏姫と八房の遺体埋葬、四十九日の法要。丶大は玉の行方を訪ねて旅に出る。
第十五回
大塚番作、父匠作から村雨丸託され結城城脱出。金蓮寺で春王・安王処刑、仇討ちに飛び込んだ匠作も討たれる。番作、刑場に乱入して父と両公達の首級奪って逃走、行きずりの庵（粘華庵）へあがりこみ留守番の娘をおどしすかして無理やり宿泊。
第十六回
番作、庵主が山賊と知り斬殺、娘が許婚の手束と知って共に信濃へ旅立つ。番作の異母姉亀篠、ならず者蟇六を家に引き込み、番作の母が心労から病死したのち夫婦に。足利成氏鎌倉の管領に。蟇六、匠作の婿と名乗り出て大塚の村長に。番作・手束、大塚へ戻る。姉夫婦に家を横領されたことに怒るが村人たちの好意によりそのまま村に移住。村長夫婦、番作に挨拶に来るよう促すが、番作は彼らの不義を憎んではねつける。手束、弁才天に子宝祈願三年、山媛から玉を投げかけられ、子犬を拾って帰った直後に懐妊、男子を出産。
第十七回
信乃命名、女の姿で育てられる。大塚夫婦、浜路を引き取る。手束病に、信乃水ごりして死にかける。手束、信乃懐妊のさいの奇瑞を語る。手束死去、葬儀の日に信乃は父に女装する理由を聞く。
第十八回
番作病がちに、農業の書著す。大塚家、紀二郎猫を飼うが、犬塚の与四郎犬に噛み殺される。信乃、与四郎を折檻する狂言、それが裏目に出て与四郎大塚家でリンチされ重傷。蟇六、騒ぎを利用して村雨丸を奪う計略たてる。額蔵（犬川荘助）初登場。
第十九回
糠助、亀篠に御教書の件で脅され、村雨丸を差し出すよう番作を説得。番作、信乃に村雨丸託して切腹。信乃、瀕死の与四郎を介錯し孝の玉を得る。直後後追い自殺しようとするが飛び込んできた男女三人（次回で大塚夫婦＋糠助だと明かされる）に止められる。
第二十回
信乃、大塚夫婦の態度を見て自害を思いとどまる。番作の葬儀。額蔵、信乃の世話役＋監視役として犬塚家に派遣される。信乃行水、額蔵と玉と痣を認め合う。額蔵、素性を語り信乃と義兄弟に。
第三輯
第二十一回
額蔵仮病、信乃との不仲を演出し、改めて大塚夫婦から信乃の監視役を命じられる。番作の逮夜。蟇六、体よく犬塚の田を横領、信乃と浜路の婚約を発表。信乃、大塚家へ引越し、男姿に。父の一周忌に額蔵と八房の梅の実を発見。
第二十二回
大塚夫婦、そのうち村雨丸奪おうと思う間に信乃十八歳に。豊嶋・煉馬の戦、大塚夫婦、戦を口実に信乃と浜路の結婚を延期。浜路、実の親の安否を気遣い信乃に相談しようとするが、亀篠来たためあわてて逃げる。亀篠、信乃に糠助の危篤を告げる。
第二十三回
糠助の妻が死んだ際のエピソード紹介。信乃、糠助を見舞う。糠助、生き別れの息子・玄吉の存在を告げ、信乃、玄吉が義兄弟と知る。糠助死亡。網乾左母二郎の人となり紹介。新陣代簸上宮六、大塚家に招かれ浜路を見初める。亀篠、網乾を贔屓にする。
第二十四回
軍木五倍二、宮六をそそのかし大塚家に縁談もちこむ。大塚夫婦、信乃を遠ざけるべく、左母二郎と談合、信乃に許我行きを持ちかける。信乃、弁才天詣での帰り、蟇六に誘われ神宮川へ、溺死させられそうになる。そのすきに左母二郎が村雨丸をすりかえる。
第二十五回
別れの宴。蟇六、亀篠に村雨丸（実は偽物）見せる。浜路くどき。信乃、額蔵と許我へ出立、途中行婦塚へお参り（行婦塚建立のあらまし語られる）、栗橋で宿、大塚夫婦の陰謀について語りあう。
第二十六回
信乃と額蔵別れる。五倍二、大塚家訪問、翌日浜路を迎える段取り。大塚夫婦浜路を脅して縁談を承知させる。浜路自害を決意。
第二十七回
左母二郎、背介から浜路の縁談聞いて激怒、浜路を誘拐。大塚夫婦、浜路の失踪にあわて土太郎に捜索させる。寂莫道人肩柳の火定。左母二郎、円塚山でかごかきらに襲われ返り討ち。浜路をなだめすかす。
第二十八回
浜路、村雨丸をとり戻そうとして左母二郎に斬られる。肩柳（犬山道節）左母二郎を倒し村雨丸を手に。通りすがりの額蔵、道節と浜路の様子を影から窺う。道節、瀕死の浜路に兄妹の名乗りをし、自分たちの因縁と隠形五遁を語る。
第二十九回
浜路、信乃に村雨丸届けるよう道節に頼むが、道節拒否。浜路絶命。額蔵、刀を取り戻すべく道節と勝負するが途中で逃げられる。二人の玉入れ替わる。宮六大塚家へ。大塚夫婦パニック、浜路失踪を白状し村雨丸献上でお茶を濁そうとするが、偽物だったために怒った宮六らに斬り殺される。額蔵帰宅、主夫婦の仇を討つ。
第三十回
額蔵、主夫婦殺害の罪着せられ投獄。信乃、許我で執権横堀在村に謁見。宿で村雨丸チェックし偽物と気づく。信乃、許我公方成氏に謁見、村雨丸の盗難を正直に説明するが、スパイ容疑をかけられ処刑されそうになったため逃亡、芳流閣に逃げ込む。犬飼見八（のちの現八）獄を出され、信乃逮捕に向かう。
第四輯
第三十一回
芳流閣の戦い。信乃・見八、川に落ちて小舟で流され、下流の行徳で古那屋文五兵衛に拾われる。信乃、見八の素性に気づき、彼との縁を文五兵衛に語る。文五兵衛、自分と見八の関係を語る。信乃、見八を死なせたと思い込み自害しようとするが、見八が起き上がって止める。
第三十二回
見八自分語り。信乃、糠助の事を詳しく語る。文五兵衛の息子・小文吾も義兄弟とわかる。文五兵衛、小文吾十六歳のときの武勇伝や彼と娘婿山林房八郎の相撲勝負とその後の不仲などを語る。謎の男（実は小文吾）、三人に声かける。
第三十三回
信乃たち古那屋へ。小文吾、小舟を流す際に何者かに襲われ信乃の着物を落とす。文五兵衛、二犬士を歓待、小文吾帰宅、たがいに玉と痣を見せ合い義兄弟の誓い。見八、現八と改名。塩浜の鹹四郎、喧嘩騒ぎで小文吾を呼びにくる。文五兵衛、小文吾が刀を抜かぬようこよりを結ぶ。小文吾外出。翌朝信乃破傷風発症。現八薬を買いに志婆浦へ。
第三十四回
文五兵衛、信乃を看病、荘官に呼ばれて外出。小文吾、帰り道で房八にからまれる。その後父が連行されるのに出あい仰天。帰宅後信乃の病を知りさらに仰天。そこへ誰かが訪ねてくる。
第三十五回
念玉帰還。ほら貝をそのへんに忘れる。鹹四郎たち弟子が押しかけ難癖つけるのをたたき出す。信乃病床であれこれ思い悩む。妙真・沼藺・大八来訪。沼藺の離縁話。小文吾、ひとまず彼らを返そうとするが、信乃のことを持ち出され一応沼藺母子を引き取ることに。妙真一人帰宅。
第三十六回
鹹四郎たち物かげから覗き見。房八もやってきて立ち聞きしている。小文吾と沼藺が押問答。そこへ房八なぐりこみ信乃の身柄めぐり小文吾と押問答。房八が大八蹴り殺したのをきっかけに斬り合いに、沼藺まきぞえで房八に斬られ、房八は小文吾に斬られる。房八、悪縁のあらましと本心を小文吾に明かす。
第三十七回
房八、信乃の治療用に自分と沼藺の血を取れといい、小文吾、ほら貝で血を集め、誤ってぶちまけたものの、それをかぶった信乃快癒。信乃、房八に感謝の言葉。丶大・照文出てきて正体をあかし、伏姫の話をする。大八復活、仁の玉登場。小文吾、仁の玉のルーツ語る。
第三十八回
信乃、与四郎命名の理由、房八夫婦の名詮自性について語る。房八絶命。現八帰還、鹹四郎ら殺害。一同今後の計画を立てる。
第三十九回
小文吾、房八の首もって父の身柄受け取りにゆく。信乃ら鹹四郎たちを埋葬、市川へ。房八夫婦の埋葬。三犬士大塚へ。丶大、小文吾が帰らぬのを案じて大塚へ。
第四十回
犬江屋にならず者舵九郎乱入、妙真をくどき照文に撃退される。妙真ら安房へ行くことに。途中舵九郎ら待ち伏せ。舵九郎惨死、大八神隠し。
第五輯
第四十一回
妙真悲嘆、照文ら慰める。小者依介の無事確認、一行安房へ向かう。三犬士、神宮川で渡し守〓（ヤス）平から大塚村の事件を聞く。ヤス平本名（姥雪与四郎）をあかし信乃に音音あての手紙を預ける。
第四十二回
三犬士、額蔵の救出を決意。小文吾前髪落とす。三犬士金剛寺に宿。信乃・現八墓参り。小文吾商人に化けて大塚を偵察。三犬士処刑前夜に禊。簸上社平、鎌倉へ訴状送り返事を受け取る。五倍二、額蔵・背介を尋問、背介死亡、額蔵筆跡テストされる。額蔵、拷問されてもすぐ回復するため不気味がられる。鎌倉から額蔵処刑決定の文届く。
第四十三回
大塚の里老、額蔵の処刑を言い渡され、彼の無実を主張するが無視される。庚申塚で額蔵の処刑執行、三犬士切り込んで額蔵救出。雷雨に救われ逃亡。戸田河でヤス平の船に救われる。力二郎・尺八奮戦。ヤス平四犬士を向こう岸に届けたのち船ごと水中に没する。四犬士やむなく逃走。
第四十四回
四犬士、雷電神社で来し方語り、刀の交換。信乃、浜路の貞節をたたえ、生涯妻帯しない旨宣言。額蔵、荘助に正式改名。四犬士、妙義山の茶屋から遠眼鏡で道節発見。定正白井城下で浪人に出会う。
第四十五回
浪人・大出太郎（実は道節）、村雨丸の売り込みとみせて定正襲うが偽者だった。巨田助友の配下、道節を取り囲むが道節は力づくで逃亡。四犬士助太刀、道節も四犬士の逃亡を援護。助友、白井に引き上げる。道節、竈門三宝平らを討ち取り、そのあまりの強さがところの伝説になる。
第四十六回
荘助、皆とはぐれ地蔵堂で桃食べる、道節と正体気づかぬまま対決、謎の老人に引き分けられる。このとき老人と道節の包みが入れ替わる。音音と単節、来し方を語る（力二郎・尺八の素性など）。ヤス平訪問、音音無視。単節、こっそりヤス平を小屋へ通し、包みを戸棚に入れて、姉・曳手を捜しに出る。
第四十七回
荘助、音音の以下を訪う。音音、荘助を試すべくわざと留守番頼み、外出と見せて様子うかがう。。道節訪問。暗闇で荘助と斬りあうが途中で互いの正体に気づき停戦。荘助、犬士のルーツを道節に語り、玉を再度交換。二犬士、信乃らを捜しに出る。荘役根五平ら、道節の手配書を持ってくる。
第四十八回
曳手・単節、旅人連れて戻る。それが力二郎・尺八とわかり一同驚愕。力二郎ら来し方語り、ヤス平が訪ねてきたと知ってあわてる。
第四十九回
音音がヤス平の包みを確かめようと、力二郎らあせる。包みあけたとたんに二人は消滅。ヤス平登場して謎とき、力二郎・尺八の首を見せる。女三人涙に暮れる。ヤス平、息子の首奪った顛末を語る。力二郎らの荷物から具足が現われる。後追い自殺を互いに止めあうところへ根五平ら再登場、音音らを捕らえようとする。
第五十回
ヤス平ら捕手を返り討ち。帰ってきた道節、根五平を討つ。力二・尺八の名の字解。ヤス平・音音の祝言、四犬士、仲人として隣室から歌いながら出てくる。式後、逃亡の相談。三宝平、駄一郎を梟首。道節、火遁の書を捨てる。追手が攻めてきたのを一同返り討ち。ヤス平夫婦、自分たちが戦う間に皆を落とそうとするが、全員残って戦おうとする。
第六輯
第五十一回
道節、ヤス平夫婦にしばらく守らせ、五犬士が外から攻める作戦を提案、全員賛成する。助友の軍、家に攻め入るがヤス平ら防戦。機をうかがう道節ら、助友の軍に襲われ防戦。母屋から出火。小文吾をのぞく四犬士、村雨丸の水気で炎を払いながら逃走。小文吾、曳手・単節を捕らえようとする兵を斬るが、二人を乗せた馬が暴走、そのまま行方不明に。
第五十二回
小文吾、馬をさがして走るが見つからず。阿佐谷近くで猪を倒し、猟師・並四郎を介抱、並四郎は礼に小文吾を家に招く。並四郎の妻船虫、小文吾をもてなすが小文吾は気詰まり。小文吾、寝込みを襲った盗賊を返り討ちにしたら並四郎で唖然。船虫、夫の非道を泣いて訴え、表沙汰にしないよう頼んで尺八（嵐山）をプレゼント。翌朝船虫は菩提所へ。
第五十三回
小文吾、船虫に不審を抱き、嵐山をこっそり返す。船虫帰宅後小文吾出立、まもなく眼代・畑上語呂五郎らに強盗殺人の容疑で捕らわれる。船虫、眼代に小文吾の罪を訴えるが、証拠の尺八は出ず。船虫怒って小文吾に斬りかかるが、逆に蹴倒される。語呂五郎、小文吾に詫び船虫を捕らえるが船虫は冷笑。語呂五郎、通りすがりの主君・千葉自胤に事件を報告。語呂五郎、家老馬加大記から船虫の処遇について叱責受ける。
第五十四回
語呂五郎、船虫の逃亡を知り、村長たちを投獄するが、その後自身も大記に投獄され獄中で死亡。大記、自胤に小文吾スパイの疑いをふきこみ、石浜城に体よく幽閉。小文吾、庭師品七から糠助との縁、大記が昔自胤の忠臣粟飯原胤度を陥れた話を聞く。
第五十五回
品七の物語（大記の策略による粟飯原一族の滅亡、妾調布の追放と出産、籠山縁連の逐電など）。しばらく後に小文吾、品七が毒殺されたことを知る。
第五十六回
女田楽石浜城下へ。大記、うちの一人旦開野を留め置く。小文吾を宴に招いて妻子と四天王を紹介。旦開野、舞を披露。大記、小文吾を対牛楼に招き、自胤を討つ相談を持ちかけるが小文吾は拒絶。小文吾、手水鉢で旦開野が歌をつづった木の葉を発見する。数日後刺客に寝込みを襲われたところを旦開野に救われて愛を告白され、共に城から逃げる約束をする。
第五十七回
対牛楼の宴。夜、旦開野、大記の首級を持って現われ、正体（胤度の遺児犬坂毛野）と仇討ちの仔細を明かす。両者城を脱出。毛野、通りすがりの船に飛び移るが、小文吾追いつけず生き別れに。小文吾、別の船に乗り込み、乗員と争いになったところを舟長に呼び止められる。
第五十八回
小文吾、舟長になっていた依介と再会、犬江屋へ。一別以来の出来事を語り合う。小文吾、父の死を知り涙、夜明けてから再び旅に。
第五十九回
小文吾、行徳の菩提寺へ。その後毛野を探しに鎌倉へ。現八、京で武芸師範、五犬士の夢を見たのをきっかけに旅立つ。網芋の茶店で親父・鵙平から庚申山の化け猫と赤岩一角一家の話を聞く。
第六十回
現八、弓矢を買って茶店を出発、夜の庚申山で化け猫の左目を射る。岩窟で赤岩一角の幽霊に出会い、角太郎が犬士と知る。
第六十一回
現八下山、返璧の庵へ、雛衣くどきに遭遇。角太郎と義兄弟であることをたしかめ、雛衣の懐妊話や武芸談義をする。角太郎の継母・船虫来訪。
第七輯
第六十二回
船虫、一角の怪我を知らせ、入水未遂の雛衣を連れてくる。現八、船虫の寛容を怪しみ、赤岩へ偵察へ赴く。
第六十三回
現八赤岩着。籠山縁連赤岩道場へ。（偽）一角へ木天蓼丸の鑑定を依頼。木天蓼丸消滅。現八、道場へ招き入れられ、高弟と縁連を倒す。偽一角、現八の強さを称えて酒をすすめる。
第六十四回
現八客間で就寝。偽一角ら寝込みを襲うが、玉のお告げで脱出、庭で戦闘後返璧の庵へ逃げ込む。角太郎夫婦、現八をかくまい牙二郎と対決。に偽一角登場、牙二郎をさとし縁連を追い返す。
第六十五回
偽一角、角太郎夫婦に眼病の薬として雛衣の胎内の子を要求。攻め立てられたあげく雛衣自害、傷口から出た玉が偽一角を打つ。現八、牙二郎と船虫を攻撃。角太郎が怒って切りかかってくるのへ、現八、一角の幽霊から知らされたこと教える。
第六十六回
雛衣絶命。牙二郎、息を吹き返し角太郎に襲いかかるが返り討ちに。偽一角、本性表して襲いかかるが、二犬士迎え撃ちにして留めを刺す。縁連、船虫縛って二犬士に媚びる。団子・東太、妖怪の首を二犬士に差しだし、神の本性を表して飛び去る。化け猫の死骸を灰にし、のちにこれを集めて猫塚を作る。
第六十七回
一角と雛衣の葬儀。角太郎、現八に尻の痣を見せる。喪明けに家など売却し二犬士庚申山へ。二人のきこりに弁当を恵まれる。茶店で鵙平の死を聞く。五犬士を探して諸国を遊歴する。馬琴による山猫の定義。縁連、船虫つれて沓掛に宿泊、誘惑されて一夜を共に。翌朝船虫逐。縁連も逐電、扇谷へ仕官し栄達。信乃、甲斐国の山路で鉄砲に撃たれる。
第六十八回
信乃、撃たれたふりして相手を引き付けとっちめる。村長四六城木工作仲裁、信乃を家に招く。信乃、雪のためにしばらく滞在。木工作の娘浜路に亡き許婚の浜路を思い出して嘆息してたら、ある夜（亡き浜路がのりうつった）浜路が訪問。再度くどかれる。夏引らに密通疑われる。木工作、素性を語り、浜路の出生も語る。
第六十九回
木工作、信乃が主筋にあたると知ってますます気に入り、信乃を武田信昌に仕官させようと考え、泡雪奈四郎を招いて宴。奈四郎と夏引、浜路と信乃を追い払う計画。木工作、奈四郎に招かれ、浜路を武田の側室にする話に怒る。
（闘牛と小狗の略説）
第七十回
一同、帰らぬ木工作の捜索。夏引、奈四郎に指月院に呼ばれ密談、念戌に全部聞かれる。奈四郎の僕・媼内ら、木工作の遺骸を埋める。翌朝遺体発見、夏引、信乃を騙して物置に閉じ込める。眼代甘利尭元（実は道節）到着、信乃と浜路を連れてゆく。
第七十一回
本物の尭元着、検分の結果、夏引らをとらえ一切白状させる。信乃、道節に連れられ、指月院で丶大・照文と再会。来し方語り合う。照文、浜路についてわけありげな前ふり。
第七十二回
照文、浜路が里見の五の姫だと語る。寺をすぐ立ち退くかで論争、しばし逗留と決定。尭元、信昌に事件報告。奈四郎を捕らえようとするがすでに逃亡、金を取りに戻った下僕を捕まえる。信昌、指月院訪問、二犬士の人柄に感服しスカウト。
第七十三回
信昌、尭元らに夏引らの処分言い渡す。木工作火葬、跡目を立てる。犬士ら浜路姫を連れて安房へ向かう。信昌再度指月院を訪れ、二犬士の出発を聞いて惜しむ。媼内、奈四郎に斬りつけ逃亡。信乃ら通りすがりに奈四郎にとどめをさす。墨田川で二犬士、姫と照文に別れを告げる。小文吾、小千谷の石亀屋に逗留、闘牛見物に。暴れ牛を取り押さえる。
第八輯
第七十四回
小文吾、須本太の宿所に招かれ酒宴。磯九郎、大金もってふらふらと出てゆく。小文吾それを知って追いかける。磯九郎、穴に落ちた女（船虫）助けようとして殺される。強盗、次団太殴って逃走。
第七十五回
船虫が盗賊（酒顛二）の妻になったいきさつ、小文吾、次団太と、磯九郎の死体を発見。小文吾眼病に。船虫あんまに化け小文吾を襲うが、逆に取り押さえられる。
第七十六回
次団太、船虫を尋問、神慮儘にかける。小文吾、玉の力で眼病治癒。通りすがりの荘助、船虫発見、身の上話にだまされ家まで送っていきもてなし受ける。
第七十七回
荘助、家の様子を疑い、寝たふりで聞き耳たてる。酒顛二ら、石亀屋襲撃を計画、邪魔な荘助を殺そうとするが、荘助いち早く脱出、一行に混じってともに石亀屋に。荘助、小文吾らと連携して賊徒ほぼ皆殺し、再会を喜び合い来し方語る。残党がアジトへ逃げ、事情聞いた船虫ら逃亡。二犬士、賊退治の功績で片貝の執事稲戸由充に呼ばれ、出頭したところを捕らえられる。
第七十八回
由充、主君（箙大刀自）が二犬士恨む理由を説き、二犬士あっさり死の覚悟を決める。由充、大刀自に二人の捕縛を告げる。丁田豊実・馬加郷武、使者として訪問、処刑された二犬士の首実検する。使者二人首もって帰国の段取り。
第七十九回
次団太、二犬士の捕縛に驚き、処刑にさらに驚く。由充、ひそかにかくまっていた二犬士を逃がす。荘助の父と由充の仲が発覚。二犬士出立、偽首をうばうべく行列を追う。諏訪に暮らす乞食二人（鎌倉蹇児、相模小猴子）の会話、小猴子、餅を買いにゆく。豊実・郷武、目付け役の荻野井三郎を引き離して諏訪の茶店で休憩。「落葉」の試し切りのために鎌倉蹇児を連れてこさせる。
第八十回
郷武、蹇児を試し斬り、かけつけた相模小猴子（毛野）、落葉を奪い郷武を撃つ。豊実逃走。荘助、毛野と刀をめぐり戦うところを小文吾に仲裁される。小文吾と毛野、一別以来の挨拶、毛野が犬士であること確定。毛野と荘助刀を譲りあい、結局荘助のものとなる。小文吾、すでに豊実を切ったこと告白、荘助・小文吾、首級が腐るように細工。三郎、郷武の部下から助けを求められ現場へ急行。
第八十一回
三郎、郷武の部下に尋問、事後処理後出立。途中で首が腐る。三郎、仁田山晋五・千葉自胤に会い事情説明。片貝へ戻り由充に事情説明。由充、大刀自をまるめこむ。三犬士青柳で宿。毛野来し方語る。荘助ら犬士のルーツ語る。
第八十二回
犬士のルーツの続き。毛野、自分の玉のルーツを語る。毛野、仇討ち優先するために翌朝こっそり消える。現八・大角、雛衣三回忌のため赤岩へ。その後また遊歴。大角、穂北近くで賊に荷物を奪われ、襦袢の袖を破られる。二犬士、盗賊を追ってきた百姓らにとりこめられる。
第八十三回
二犬士無実を主張。二人の百姓（世智介・小才二）、無礼を詫び二人を郷士の屋敷へ伴うと見せて落とし穴に落とす。郷士・氷垣夏行、二犬士と対面、釈明を無視し処刑しようとする。夏行の娘・重戸、父を諌め処刑を延期させる。二犬士軟禁。
第八十四回
重戸、見張りを遠ざけて二犬士逃がし、気絶した振りをする。現八、千住河の船上で謎の二人と戦う。二人の正体が信乃・道節と発覚。信乃らが盗賊捕らえていたことがわかる。大角、包みを取り戻し父母の位牌に合掌。道節の計略で追手を待ち受ける。夏行と婿の落鮎有種、倒れてる重戸を見つけ激怒、二犬士を追う。四犬士夏行父子をからめとり、賊と対面させる。
第八十五回
夏行ら犬士の無実を知り反省。信乃・道節が結城・煉馬の残党と知って喜ぶ。夏行、自身の来歴語る。盗賊処刑。四犬士穂北に滞在。重戸と再会し、彼女の才を褒めたりけなしたり。重戸、伏姫が夢で告げたことを語り、四犬士は伏姫の守りを実感。
第八十六回
現八・大角指月院へ。道節、五十子城の定正襲撃を有種にもちかける。信乃の反対をよそに五十子城を偵察。現八ら、小文吾らと再会しそろって出立。丶大、後住の僧に寺をまかせ出立。葵岡で大沼祭の話を聞き、サギだと看破、知風道人を名乗り、鉄砲の名人二人を雇い、祭りの夜癖者を撃たせる。
第八十七回
丶大、村長に事情説明。癖者の一人（風九郎）を尋問し、サギだと白状させる。アジトの洞で真猯が化けた老夫婦に出会う。洞に捕らわれていた女たち救助。風九郎、真猯にかみ殺される。丶大、村長らが止めるの振り切って出発、結城へ。
第八十八回
放下屋物四郎の口上と剣技。浪人（道節）、物四郎に人相占ってもらう。別の旅人（鮒三）手相見てもらい、次団太の危難を語る。蟹目上参詣、ペットの小猿が逃げ出し木に宙吊りに。物四郎、猿を助ける条件として褒美を要求する。
第八十九回
物四郎、褒美について河鯉守如の言質を取った上で小猿救出、次団太の釈放を要求する。守如、物四郎の義侠に感心。鮒三、物四郎が小文吾らの友人と知って喜ぶ。蟹目上、五十子城へ帰還。守如、抜き打ちで物四郎の戦闘力を試したのち、扇谷の佞臣・竜山（籠山）縁連暗殺を依頼。物四郎（毛野）、自分の正体を告げ、刺客の役を引き受ける。
第九十回
船虫、媼内を亭主に司馬浜で売春＋強盗殺人を生業とする。放免善悪平、船虫を捕らえようとして、媼内に射殺される。牛を盗んできた媼内、追ってきた持ち主をも殺害。船虫、うっかり小文吾に声かけてしまい、六犬士につるしあげられ、媼内ともども牛の角でつき殺される。
第九十一回
信乃・道節、定正襲撃計画を語る。六犬士、毛野の仇討ち援護と定正打倒に意気込む。村人、船虫夫婦が梟首されてるのを見て騒ぐ。縁連五十子城出発、毛野襲撃。
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