碧也ぴんく氏は『ＢＬＩＮＤ ＧＡＭＥ』１巻後書きで、八犬士を玉の登場時期によって分類している。そこでは「生まれる前」「妊娠中」「生まれた後」「いっぺん死んで再生した時」の４項目に分けられているが、ここでは単純に〈未生〉〈生後〉で分けてみた（道節の肩の瘤は生まれつきのものなので、〈未生〉に分類した）。その結果、
〈未生〉＝信乃、道節、親兵衛、毛野
〈生後〉＝荘助、現八、小文吾、大角
ときれいに２つに分かれた。この両者を見比べると、明らかに〈未生〉の四人が〈畸型性〉を帯びているのに気がつく。
四歳まで左手が開かず、〈大八＝不具〉と揶揄された親兵衛、身体が傾いてみえるほどの大きな瘤があった道節、女装で育てられた信乃と毛野もその意味で完全な男とは言えまい。これらの〈畸型性〉は彼らが犬士と発覚する前後で失われている。
また道節と親兵衛は一度死んで蘇生、信乃も危篤状態から奇跡的に命を取りとめているが、いずれも〈親〉の血の海（「血の海からの再生」参照）や腐乱死体の隣から蘇ってくるという血生臭さ。懐胎三年、何回堕胎薬を飲ませても堕りなかった毛野に至っては、本当の〈血塊〉に玉が生命を与えたのではないかとすら思える。畸型性＝聖性と見なすなら、彼らは〈生後〉組の四犬士に比べて、前世の父母たる伏姫と八房により近い存在と言える。
では彼らは母親（伏姫）似か、父親（八房）似か、というと、
母親似−−信乃、親兵衛−−光の犬士
父親似−−道節、毛野−−闇の犬士
だろう。これは物語の終わり近くに登場する四天王開眼のエピソードで玉が対になった同士でもある。彼らの共通点については長くなるので別項（「〈聖〉犬士の共通点」）で述べる。
『八犬伝綺想』では一方に伏姫を、一方に船虫を置いて、間に犬士たちをその特性によって配置しているが、これにならって一方に伏姫、
一方に八房の母と思われる玉梓(「八房＝玉梓か？」参照）を置いて、この四犬士を配置してみると、
玉梓 |
毛野 |
道節 |
信乃 |
親兵衛 |
伏姫 |
こんなところだろうか。対称の位置にいる毛野・親兵衛は船虫誅戮の場にいないという共通項がある。また｢仁」「智」はしばしば対にして語られ、やはり対称の位置の道節・信乃の「忠」「孝」も同様である。この図に残る犬士を船虫との関わり度、四天王像にはめこんだ玉の組み合わせ、対管領戦での守備位置など考慮して配置すると、
玉梓 |
毛野 |
道節 |
大角 |
小文吾 |
荘助 |
現八 |
信乃 |
親兵衛 |
伏姫 |
| 洲崎沖 | 行徳 | 国府台 |
こんな感じになった。国府台戦は死者はほぼゼロで、行徳戦は比較的少数、洲崎戦は大多数と、左へいくほど死者数が増えている。しかし〈生後〉の四犬士は〈未生〉の犬士ほどはっきり〈光〉〈闇〉に分類できない。彼らは〈聖〉犬士に対する〈俗〉の犬士と言えるかもしれない（大角についてはちょっと疑問があるのだが）。
〈ｂａｃｋ〉
〈ｈｏｍｅ〉
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